卓越したサービスの基準を育むために

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新任スタッフの潜在能力を最大限に引き出す承認型指導

おもてなしの世界において、私たちが「当然」と考える卓越性の基準は、新しく仲間となったスタッフにとって、必ずしも自明のものではありません。

最高のサービスを提供する組織として、この認識の差異をいかに埋めていくかが、人材育成の要諦となります。

基準の相対性について

ベテランスタッフにとって自然な振る舞いや判断基準が、新任スタッフには明確ではないという事実に、私たちは常に意識を向ける必要があります。

例えば、「さりげない心配り」「先を読んだ対応」「細部へのこだわり」といった、おもてなしの基本とも言える要素は、実際の経験を通じて徐々に体得されていくものです。

承認を通じた基準の確立

特筆すべきは、望ましい行動や判断を「当然のこと」として黙って見過ごすのではなく、明確な承認を通じて強化していく姿勢の重要性です。

具体例として、

新人:「お客さまからご依頼のあったレイトチェックアウトについて、念のため客室とベルマンにも伝えておきました」

ベテラン:「それは素晴らしい判断ですね。こうした情報の共有は部署間の連携においてとても大事です。かつお客さまにもスムーズなご案内ができます。迅速に対応してくれてありがとう。」

このような対話を通じて、新任スタッフは以下のことを学ぶことができます。

  • 部署間連携の重要性
  • 迅速な対応の価値
  • 報告の必要性と適切なタイミング

日常的な卓越性の認識

特にハイレベルなおもてなしが求められる現場においては、日常の細部にまで気が行き届いてることが必須です。
  • 完璧な身だしなみ
  • 凛とした立ち居振る舞い
  • 適切な敬語の使用
このような「小さな卓越性」に対しても、適切な承認を行うことで、組織における当たり前の基準を引き上げることができます。

具体的な取り組み方

1.観察の質の向上

  • 新任スタッフの行動を、批判的ではなく、育成的な視点で観察する
  • 改善点だけでなく、称賛すべき点も意識的に探す

2.承認の具体化

  • 抽象的な褒め言葉ではなく、具体的な行動とその価値を言語化する
  • その行動が自社ブランドの価値にどのように貢献するかを説明する

3.継続的なフィードバック

  • 定期的な面談だけでなく、日常的な対話の中で承認を行う
  • 改善点を指摘する際も、既に達成している基準と合わせて伝える

効果的な承認のための確認事項

□ スタッフの成長機会を日常的に観察していますか?
□ 望ましい行動を具体的に言語化していますか?
□ 承認が形式的になっていませんか?
□ ブランドの価値観と紐付けた承認を行っていますか?

おわりに

ラグジュアリーブランドにおける「当たり前」の基準は、実は長年の経験と深い理解によって培われた貴重な知見の集積です。
この暗黙知を、次世代に効果的に伝承していくことが、私たちの重要な責務といえるのではないでしょうか。
日々の丁寧な観察と適切な承認の積み重ねが、ブランドの未来を担う人材の育成の基礎をつくります。